活性酸素を防ぐ(3)

ビタミンB₂の抗酸化物質

体の中では、多数の抗酸化物質が働いていますが、この防衛網を突破されたらどうなるのでしょうか?

 

抗酸化物質には、活性酸素やフリーラジカルが発生したとたんに消去する機能を持っているものと、活性酸素やフリーラジカルの攻撃でできてしまった過酸化脂質が連鎖的に広がらないように抑え込む機能を持ったものがあります。

老化色素でできたメラトニンなどもそうした役割ですが、さらにできてしまった過酸化脂質を片づけてくれる機能を持ったものも用意されています。

その過酸化脂質を片づけるのは、グルタチオンペルオキシターゼという酵素です。

酵素というものは、人工的に作って口から食べて補給するということが出来ません。

ところが、酵素はビタミンが補酵素という形で働くことで、その活性を発揮する場合があります。

うまいことに、このグルタチオンペルオキシターゼという酵素には、ビタミンB₂がその活性化の役割を果たしていますので、ビタミンB₂を利用するとこの酵素も良く働き、過酸化脂質を片づけるという結果も得られます。

ビタミンB₂入りのエサで強化したネズミと、普通のエサで飼ったネズミ双方に、同僚の過酸化脂質を食べさせると、普通のエサで飼ったネズミの方は死んでしまいますが、ビタミンB₂入りのエサで強化したネズミの方は元気に成長した、という研究結果があります。

これなどは、グルタチオンペルオキシターゼの働きをビタミンB₂がバックアップしたために起きたと考えてもいいでしょう。

ビタミンB₂は、脂肪酸を正常に代謝させる機能も持っていますし、また以上に参加したために発生した過酸化脂質を分解するのにも役立ちますから、ビタミンB₂も酸化防止システムの中に加えておいた方が良いビタミンです。

 

色々な抗酸化物質

抗酸化物質は、いくつかに分類することでよく理解することが出来ます。

その一つの分類の仕方は、酵素類、タンパク質類、低分子化合物といった性状によって分ける方法です。

低分子化合物は、さらに脂に溶けるものと(脂溶性)、水に溶けるもの(水溶性)に分けられます。

 

作用の方向から分ける方法もあります。

それは、いったんできてしまったフリーラジカルを無害なものにするという抗酸化物質で、ビタミンEが代表的です。

これには、ペルオキシダーゼやカタラーゼなどがあります。

 

このほかにも紹介することがまだまだあるのですが、極めて専門的な話になってしまいますので割愛します。

ただ、例えば、漢方薬などに使用されている生薬には、未知の酸化防止の作用を持っているものもあるはずで、抗ん後の研究によって老化の防止や成人病の予防に役立つものがいずれ解明されてくることでしょう。

こうしてみると、抗酸化物質は実に多彩な顔触れを揃えて、文字通り十重二十重の防衛網を敷いて私たちの身体を酸化から守っていることが理解いただけたと思います。

 

ビタミンCのネズミの実験

私たちは酸化を防止する機能に守られて、平穏に生活を続けていられるわけですが、ヨーロッパやアメリカの疫学調査や、ミクロの世界での酵素の解明が進んで知識が豊富になって着ました。

様々な動物による実験も直ちに人との関係が立証できない面もありますが、大いに関心を引く研究もあります。

自然に与えられた酸化防止の機能に頼るだけでなく、酸化防止機能を補強する可能性のあるビタミンを利用することも一つの選択であることは間違いありません。

ビタミンが特有の欠乏症を予防するために利用されるだけでなく、より積極艇に酸化を防止するシステムの一環として利用されることがビタミンの新しい考え方で、食事からとれば十分という従来の考え方を改めて、もう少し積極的に利用した方が良いと考えられるようになってきました。

 

それでは、こうして身近にあるビタミンを飲んでおけば長生きをするのでしょうか?

ここに興味深いネズミを使った実験があります。

二郡のネズミを飼います。

一方に群れには飲料水に1パーセントのビタミンCを添加します。

もう一方のネズミの群れにはビタミンCが添加されていない普通の飲料水で、その他は全く同じ餌、同じ環境でこのネズミを飼育します。

 

ネズミの最大潜在寿命は約1000日ほどですが、普通のエサで飼育したネズミの方は400~500日を過ぎるとぽつぽつと死んでいくものが出てきます。

その多くはがんが原因でしたが、わずかですが最大寿命を全う出来たネズミもいました。

一方、飲料水に1パーセントのビタミンCを入れたほうのネズミは、ほとんどの大部分が1000日の最大潜在寿命をクリアーすることが出来た、という実験結果でした。

ビタミンCも抗酸化物質の一つなのです。

ここで言えることは、ビタミンCはネズミの最大潜在寿命を引き延ばすことは出来なかったのですが、鼠全体の平均寿命を延ばすことが出来た、という事です。

 

活性酸素の発生を積極的に防止することは、最大潜在寿命を全うするかのせいを高めるということが言えます。

しかし、ここで注意していただきたいのは、鼠はエサも生活環境も理想的な状態にきちんと管理されていたという事です。

私たち人間にとっても、食生活も生活環境も、そして生活態度も満点であれば1パーセントのビタミンC入りのネズミと同じえっかが得られるかもしれません。

しかし、鼠よりも人間の方がさらに複雑な環境や体の構造を持っていますから、ビタミンCを飲んでいれば大丈夫というほど単純だとは思えません。

でも、そうした複雑な条件をクリアーすれば、多くの人々が最大存在寿命を全うできる可能性があるとということは言えるのではないでしょうか。