ビタミンと薬(2)

薬に対する国の基準

ビタミンが薬として用いられる場合は、「ビタミン主役製薬製造承認基準」という国で決めた基準があって、そのビタミンはどれくらいの量をどのような目的で服用するとか、あるいは、そのビタミンと度のビタミンは複合した製剤を作ってもいいといった、細かい決まりが出来ています。

もし、この決まり以上の量を服用したり、決まり以外のものを配合しようとすれば、効果や安全性なその膨大なデータを整えなければなりません。

ですから、説明書に一言を入れるにも膨大な費用と時間がかかる場合が多いのです。

 

以前に、一日に、ビタミンEが100~300ミリグラムとか、ビタミンCは1000~2000ミリグラム必要だ、と述べましたが、これは適当に述べた数値ではなく、国で決めた基準を参考にして述べたわけです。

ただ、ビタミンE剤、ビタミンE・C剤について、現在では老化の予防とか成人病の予防といった目的で服用してもよい、という記載はあまり明快ではありません。

「老年期におけるビタミンE・Cの補給」という適応症がこれに相当します。

「老年期」になってから、ビタミンE・Cの補給を始めて、老化の予防とか成人病の予防に間にあるかどうかは疑問です。

また、ビタミンE剤、ビタミンE・C剤については、過酸化脂質を防ぐ効果がある、という意地を説明書に書いても良いということになっていますが、過酸化脂質が体にどのような影響を及ぼすかについては書いてはいけない、といった細かい規制があります。

しかし、薬以外で、これほど厳格な管理をされているものはありません。

 

ビタミンの別の名称

ビタミンEは、一般名を「トコフェロール」といいます。

「ビタミンE」で十分なのですが、トコフェロールと書いてあるものもありますので、一般名も知っておくと便利です。

ビタミンEには四種類あって、効力に強弱のあることが分かっています。

それはα体(アルファ体)、β体(ベータ体)、γ体(ガンマ体)、δ体(デルタ体)の四つで、たとえば「α-トコフェロール」と表現します。

活性酸素を消去する力は、様々な実験から、一番強力なのはα体で、少し弱くなってβ体とγ体が同じくらい、δ体が一番弱いという順番になっています。

 

動物や植物など、自然界の中にビタミンEは含まれているのですが、この四つのタイプが入り混じっていますので、α体だけを取り出してきて飲むのが理想的です。

食品の場合は、「ビタミンE配合」と表示してあるケースもありますが、どの種類のものがどのくらい入っているかはっきりしていないと、服用量も分からないので困ります。

しかし、医薬品の場合は、必ずどのタイプがどれだけ入っているかが明示されています。

 

さらに面倒なのは、「天然」とか「天然型」といった表現があることです。

「天然」のものは酸化しやすく、「天然型」の方は天然のビタミンEが酸化されないように処理がしてあるという意味なのですが、ビタミンEを飲む場合は、こうした知識を持ったうえで上手に利用しましょう。

ビタミンCは、その点では明快です。

「アスコルビン酸」というのが一般名で、αとかβとか、あるいは天然方な祖という面倒なことはありません。

ビタミンB₂は、一般名を「リボフラビン」といいます。

そして、酪酸エステルという形をしているものが硬化も高く、良く使われます。

ベータカロチンはビタミンAと親せきですが、先の三つのビタミンが医薬品としても使われているのに対し、ベータカロチンは、まだ医薬品として認められていません。

目下のところでは、ビタミンの基準の中にも入っていませんし、他の医薬品との合剤として用いることのできません。

しかし、最近、医薬品と食品の中間的なものとして「特定保健用食品」という分野が出来、効能・効果をうたうことが出来るようになりました。

ベータカロチンも、近い将来、この中に入ることが期待されています。

 

ビタミンに副作用はあるのか?

薬と食品との差異について理解したうえで、ビタミンは食事からとるという基本的な考えを大切にしながら、ビタミン剤を補助的に利用するのも賢い方法です。

歳をとると、食事の量は減ってきて、相対的にビタミンをとる量も減ってきます。

しかし、老化の予防とか成人病の予防といった意味でのビタミンは、むしろ年を取ってからの方が重要になるのですから、食事だけに頼るのも心もとないことです。

反対に発育盛りの子供や、激しい運動をする人、妊産婦などはビタミンの消費量が多くなりますので、補充してあげる方がベターな場合もあります。

これまで述べてきたように、日常的に摂るビタミンの量と予防効能を期待して摂る場合との量の間に相当の開きがありますが、副作用はないのかという心配が出てきます。

 

ビタミンを摂り過ぎて副作用が心配されるのは、ビタミンAとビタミンDです。

その他のビタミンは、世界中でずいぶん大量に、しかも長い月日にわたって服用された例がたくさんありますが、重大な副作用の報告はありませんでした。

ただし、ビタミンAについてもビタミンDにしても、薬の説明書に表示してある服用量を守っていれば大丈夫です。

その他のビタミン剤も薬としてとる場合は服用量を守ることは同様に大切です。

最近の薬としてのビタミン剤は、こうした様々な状況を考慮して服用量を決めてありますので、「薬だと怖い」とは考えずに、積極的に利用されるのが良いでしょう。