活性酸素と食事(2)

不老長寿の薬

かつては、日本人は米飯に英湯補給の大部分を依存していた時期がありました。

その結果、タンパク質を補うためには相当多量に米飯を食べなければならなくなります。

そして、タンパク質が慢性的に不足して、一方で糖質が余ってしまうというアンバランスが生じてしまいました。

 

あるいは、ヨーロッパやアメリカの食事のようにすると、動物性の脂やバターをたくさん使いますから、脂質が突出して多くなってしまいます。

必ず食べなければならない栄養素は、40~50といった多種類に及びます。

これをどれにも偏らずに食べることはなかなか難しいことですが、健康を大綱のレベルにいつも維持しておくためにも、老化を防いだり、成人病にかかりにくくするためにもこれは大切なことなのです。

糖尿病を患った人でも、ちゃんと食事療法を守った人は、80歳、90歳と大変長生きをしていることからも、以下に食事が大切かが分かります。

どうやら不老長寿の薬を捜すのは徒労に帰したようですが、現在の最新の栄養学がたどり着いた結果が、この「バランスの取れた食事」という考えで、これぞ人類が追い求めていた不老長寿の秘法だったのです。

 

お米は心臓病を減らしているか?

厚生省は、一日に30種類以上の食品を組み合わせる事、毎日同じ食品を食べないように心がける事、という原則を示してバランスの取れた食事がとれるように提案しています。

これも確かに食事が偏らないための良い工夫です。

しかし、30種類の食品を毎日食べるということは、専業主婦のいる家庭ならまだしも、なかなかの苦労であることは変わりありません。

バランスの取れた食事を米という食品を中心に考えてみましょう。

実は、米と組み合わせの良い主菜はとても多いのです。

お案と比べてみれば一目瞭然です。

 

例えば、魚であれば、お案に会うのはせいぜいフライにバター焼きぐらいなものでしょうか?

それに比べて米の場合は、刺身から煮魚、塩焼き、つみれと洋の東西を問わずなんでもあってしまうという特性を持っています。

パン主食になると、脂肪分が多い献立になりがちです。

アメリカやヨーロッパの食事がその典型で、動脈硬化の患者は日本に比べて格段に多くなっています。

1年間の虚血性疾患(心筋梗塞など)で亡くなる人の数は、10万人当たり日本 41.8人 に対して、アメリカ 200.6人 旧西ドイツ 216.8人 スウェーデン 299.3人 イングランド 294.6人 など、日本に比べて4倍から6倍になるといった具合で、圧倒的に欧米では多くなっています。

これも脂肪の摂り過ぎが主な原因と考えられています。

米という優れた食品をこうしたバランスの取れた食事という観点から、再認識してみるのも価値のあることです。

 

特定の食品に偏らない

ここで注目していただきたいことは、「食事」の意味です。

食事とは様々な食品を集めて調理したものです。

すなわち、システムを形づくっているという事です。

特定の食品が何か健康に大変良いというように思いこむ人が往々にしているのですが、身体は微妙なバランスの上に成り立っているのですから、特定の食品をたくさん取ればバランスを損なってしまう可能性があります。

 

かつてアメリカで、リノール酸がコレステロール値を下げる効果があるということで、もてはやされた時期がありました。

ところが、リノール酸は不飽和脂肪酸の代表で、体の中に入っても酸足安い食品ですから、一定量を超えると自然に備わっている酸化を防止する機能が追い付かなくなって障害を起こすことがわかり、1981年、アメリカ国立がん研究所がリノール酸の摂り過ぎに警告を出すという事件がありました。

特効薬的なものに期待をかける気持ちは分かりますが、バランスの取れた食事というシステムがすべてに優先します。

個々の食品は病気を治療したり予防したりすることはできませんが、様々な食品が集まってっ出来た「食事」は、病気を治療したり予防しらりすることが出来ます。

例えば糖尿病の障子療法とか、塩分を控えた高血圧症のための障子療法はその代表的なものです。

食事をバランスの取れた献立全体というシステムで考える習慣をつけるようにしましょう。

 

三つのお皿プラスαで考える

バランスの取れた食事はお皿ごとに組み立てましょう。

まず「主食のお皿」。 

パンでも麺類でも結構ですし、豆類などもお勧めです。

これは主として糖質の供給源です。

 

次に、「主菜のお皿」を付けます。

メインディッシュともいわれるものですが、これには魚とか肉類がきます。

その他、卵料理や豆類を使ったものも含まれます。

タンパク質の供給源です。

 

それに、「副菜のお皿」をつけます。

これは、野菜を主に海草類、キノコなどを加えた料理で、サラダ、炒め物、お浸し、鍋物、煮ものなんでも結構です。

野菜は火を通した方が食べやすくなりますし、量も食べられます。

一日に300グラムは必要です。

そのうち緑黄色野菜は、100~200グラムと出来るだけたっぷりとるのがコツです。

この副菜はビタミンやミネラル、食物繊維など体を円滑に動かすのに欠かせない食品です。

 

これに、スープとか味噌汁、塩分を控えた漬物などを加えてください。

おやつ的な要素でもありますが、牛乳や果物類も欠かせません。

 

この中で取り方の難しいのが脂肪です。

脂肪を控えミニというキャッチフレーズを時々見かけますが、脂肪を多くとり過ぎている人には適切なキャッチフレーズであっても、脂肪の摂り方の少ない人にまでいっそう控えさせることは誤りです。

全体量として一日50~60グラムを植物性の油、動物性の脂、魚の脂を5対4対1の割合でどちらにも偏らないように毎日の献立を工夫してください。

ですから、「適量の脂肪を取りましょう。少なすぎても多すぎてもいけません」という考え方が正解です。

 

さて、ここが大切なのですが、主食、主菜、副菜の3つのお皿を必ずそろえることです。

例えば、今日はすき焼きで肉をいっぱい食べたから主食のご飯はやめておこう、では困るのです。

脂質やたんぱく質が多すぎて炭水化物が不足するというアンバランスが生じてしまうからです。

こうしたアンバランスな食事を続けていると、活性酸素の消去能力にもマイナスに働きますし、活性酸素の攻撃対象を増やしてしまう事も考えられ、次第に健康を損なうという事態になります。

血管は一番早く老化する器官で、しかも毛細血管迄入れると、人体のほとんどを網羅する大変大きな器官ですから、いったん老化してしまうと、もとの弾力性に富んだ若々しい血管に戻すことは不可能です。

細菌に感染して発熱した、という種類の病気は細菌を殺してしまえば、またもとの健康体に戻りますが、食事のアンバランスで長い期間かかって体に与えたダメージは、障害が出てしまうと簡単にもとの健康体に戻りません。

このようにがんにしても動脈硬化にしても、患ってからでは治すのに大変な病気ですから、まず予防を心がける事です。

その最高の方法はこのバランスの取れた食事です。