老化の原因と活性酸素(2)

老化は酸化防止システムの老朽化

身体の酸化はどうしても避けられないものなのでしょうか?

 

ご安心ください。

鉄に塗料を塗っておけば酸化されないように、人間の身体にも塗料に相当する錆止めが施してあります。

それも十重二十重になって酸化されないような仕組みになっています。


その錆止めというのは、酵素、たんぱく質、さらにはビタミンなど実に様々な錆止め総動員されて、活性酸素が発生するとたちまちこれを消してしまうように出来ているのです。

ただ、このシステムも、人生の半ばを過ぎてくるころには傷んできたり欠け落ちてきて、次第に老朽化してくるのです。

今の科学では(1995年6月現在 最新の情報ではありません)、活性酸素を完全に防ぎ、いつまでも若々しさを保つ技術は完成していません。


しかし、ある程度の鮮明が進んで、老化を少しでも食い止める手立ては見つかってきました。

そのためには、活性酸素の発生するメカニズムをよく理解して、適切な手立てをしていくことが第一です。


ここでは、その手引きとして活性酸素の実態を明らかにして、色々な角度からその対策を考えてみようとするのが目的です。

老化や癌、成人病というと、若い方は関心が低いかもしれませんが、対策は少しでも若い方が効果的なことは確かです。

 

なぜ老化するのか__老化を決めるプログラム

なぜ人は老化するのか、という命題は古く秦の始皇帝の時代にもすでに研究され、不老不死の薬を求めて、世界中を捜し歩いたと伝えられています。

その結果生まれたのが漢方だったのですが、結局今もって不老長寿の薬は発明されていません。

今後も不老長寿の薬は、それほど期待は持てそうにありません。


この老化の原因には、様々な説があります。

生物は生まれながらにして老化のプログラムを持っているという生物時計説があります。


これは、人間が新生児として出生し、幼児から次第に成長を続けて青年、壮年となり、やがて老化して死に至るサイクルが、個人によって多少の長短があっても、同じ老化のプログラムにしたがって一生を終えるそのプログラムを解明するものです。

しかし、この考え方は、内分泌や酵素、生化学といった複雑な要因がからまり合っていていて決定的な結論を出すまでには至っていません。


老化プログラムが、遺伝子情報を司るDNDの中にあるというDNA説もあります。

DNAは頻繁にエラーをおこしていることが分かってきていますが、このエラーを修復する機能があります。

この修復する機能が年齢というプログラムにしたがって低下していくのではないか、という考え方です。


また、細胞を培養して何代も継代していくと、ある一定以上は継代しなくなってしまうという現象があります。

人間はあらかじめ寿命が決まっている細胞の集まりということから、当然寿命は決まっているという見方も出来ます。

また、下垂体や副腎皮質など、様々な器官からホルモンが分泌されていますが、これも年齢を重ねると低下してきて老化を進めます。

ホルモンの分泌が低下することは分かっていても、なぜ低下するのかは明快に説明できません。


同じように、免疫力も年齢とともに低下してきて、高齢になると免疫力の低下が原因と思われる病気が増えてきます。

免疫の機能も次第に解明されてきてはいるのですが、年齢を重ねるとなぜ免疫力が低下するのかという問題になると、これもはっきりした回答はありません。


このように、人間も進化の過程の中で子孫を作りながら新陳代謝を繰り返すこと、種の保存を続けていくという生物のメカニズムに中にあることから、老化という宿命を認めなければならないのでしょうか。

 

酸素の消費量が少ない動物が長生き

様々な動物の最大存在寿命をしている研究の中で、アメリカ国立老年研究センターで老化の研究をしているR.カトラー博士が1980年に発表した因果関係は、種々ある老化説の中で興味深い発見があります。


その発見の骨子は、霊長類(人間もその中に入ります)の運動量と、活性酸素を消去してしまう酵素(SOD)の量が最大存在寿命と大変深い相互関係にあるという事です。

それは、「霊長類の中で、酸素の消費量が少なく、一方で酸素の毒性を消す能力の大きい霊長類ほど長生き」というものです。


酸素に毒性があるという考え方は、ちょっと異様に聞こえるかもしれませんが、ここ数年の間に様々な角度から急速に研究が進んできて、老人や成人病の原因ではないだろうかと考えられるようになってきました。

酸素は私たちにととって必要不可欠なものですが、同時に毒性もあって、酸素を利用して生きている動物には、この酸素の毒性を防ぐ手立てが十重二重にできていないと生命を維持することが出来ません。

霊長類の中でも、この酸素の毒性を防ぐ手立てが十分で、しかも酸素の消費量の少ない、つまり運動量の少ない動物ほど長生きだという事実は、老化を考えるうえで役に立つ発見と言えます。


ここでいう運動量とは、単に動き回るという意味での運動ではなく、基礎代謝という運動量です。

基礎代謝というのは、静止している状態でも必要とするエネルギーの量のことで、例えば体温を維持することや心臓をはじめいろいろな臓器を動かすなど、じっとしていても消費されるエネルギーのことです。

基礎代謝も含めて運動量が増えれば、それだけエネルギーをたくさん作らなければなりませんので、それにつれて酸素の消費量も増えるという関係があるのです。