活性酸素(1)

身の回りで起きている酸化反応

「活性酸素」を解説するにあたって、改めて「活性酸素」とはどういうものかを説明していきたいと思います。

 

私たちは、普段、科学や物理学に関係がなくても「酸化」という言葉はよく使う言葉です。

「酸化」は、化学の様々な反応の中でも、もっともポピュラーな反応のひとつでしょう。


例えば、火が燃えるのも酸化反応ですし、鉄が錆びるのも、プロパンガスが爆発するのも同じ酸化反応です。

少し分かりずらいかもしれませんが、私たちの体の中でブドウ糖を分解してエネルギーをつくっているのも酸化反応なのです。


プロパンガスが爆発的に酸化反応を起こすのは、プロパンガスが気体のため酸素との接触面が広く、小さなきっかけでも広い範囲で瞬間的に反応を起こすためです。

一方、薪や炭が時間をかけて徐々に燃えていくのは、薪や炭の表面だけが酸素と接触しているために(酸素と接触している面積が小さいために)、こうした特有の燃え方をするのです。

鉄の表面が錆びるのも、大変ゆっくりした酸化反応ですが、この反応を利用したのが使い捨てカイロです。

使い捨てカイロには、鉄の粉が入れてあって、揉むことで酸素と鉄の粉が混ざり合って酸化反応を開始し、ちょうどうまい具合に酸化反応が進んで持続的に熱を発する仕掛けになっています。


ブドウ糖が分解してエネルギーを作っているのですが、簡単に言えばブドウ糖を酸素で酸化反応させ、ついには二酸化炭素や水にまで分解していくわけですが、試験管の中にブドウ糖と酸素を入れてかき回しても何の反応も起きません。

この反応を進めているのが、「酸素」の役割です。

薪や炭をを燃やすのにはマッチで点火しますが、ブドウ糖の酸化反応では、このマッチの役割をするのが酵素です。

こうして、酸素が反応の口火を切ってエネルギーを作り出す酸化反応が始まるわけです。


ふつう、「酸化」とは、空気中にある酸素がある物質を変質させてしまう現象、といった意味合いで使われています。

もちろん、それでも間違いではありませんが、ただ、正確な表現ではありません。

正確に表現すると、「物質が電子を失う事を酸化といい、反対に物質が電子を受け取ることを還元という」ということになります。

簡単に言うと、酸化とは電子のやり取りという事です。

ですから、酸化と還元は裏表のような関係にあります。


多くの場合は、酸素が酸化の主役なのですが、必ずしも酸素が関係しなくとも酸化はおきます。

しかし、多くの場合、酸化は酸素が主役となっておきます。

 

活性酸素は反応性に富んだ酸素

私たちが呼吸によって体の中に取り込んだ酸素は、生きていくために必要なエネルギーを作り出すために利用される一方で、身体の重要な部分を酸化させてしまう事もあります。

これは、酸素の特有の構造に原因があります。

鉄という頑丈な物質ですら、酸素は錆という酸化活動で破壊してしまう力を持っているのですから、私たちの身体を酸化させることは簡単です。


これまで、「活性酸素」という言葉を使ってきましたが、ここで改めて「活性酸素」について見ていきましょう。

「活性」という言葉の響きからは、元気が良くて、良い働きをする酸素のイメージを思い浮かべがちですが、実はそうではないのです。

「活性」というのは、ひじょうに反応性に富んだ(ちょっとしたきっかけで、色々な形に変化する)という意味で、つまり、「活性酸素」とは、活発な動きをする酸素という意味です。

活性酸素が酸化を促進することで、人間をはじめこの世の動物は老化が促進されるとか、動脈硬化や癌といった死に至る病の引き金になったり、その他の多くの病気や障害に関係しているのです。

 

未熟児網膜症は活性酸素による障害

活性酸素が私たちに障害を与えるということが具体的に分かったのは、未熟児網膜症という病気です。


新生児が体重1キログラム以下で出生した場合でも呼吸管理が進歩して生き残れるようになりました。

この呼吸管理とは、濃度の濃い酸素を与える療法です。

この療法によって新生児の死亡率が著しく完全されたのですが、一方で未熟児網膜症という不幸な障害を起こしてしまったのです。

新生児網膜はまだ未発達で、その発達の過程で血管がふさがって血流が滞り、毛細血管の不規則な増殖ができ、そこから出血して硝子体が曇ってしまうという障害がまれにおきます。

未熟児の場合は、その度合いが高く、呼吸管理で動脈の濃度が高くなると、活性酸素が増えこうした障害を引き起こしやすくなると考えられるようになりました。


今では対策も完全にとられていますが、以前はこうした活性酸素の関与や役割などが明らかではなく問題となっていました。

これをきっかけに酸素がプラスの面だけでなく、マイナスの面も無視できないことが分かり、活性酸素による認識が高まったわけです。