活性酸素と病気(2)

老人性痴呆

老人性痴呆が話題になっていますが、これも活性酸素とのかかわり合いがある可能性があります。

脳は大変脂質が多く使われている器官なのです。

ですから、当然活性酸素の攻撃を受けやすい素質を持っています。

 

老人性痴呆の原因の一つでもあるアルツハイマー病では、大脳全体が委縮して脳を形作っている神経細胞が小さくなったり、消えてしまったりします。

そして、脂質が異常に酸化した結果であるリポフスチンが脳の中にたくさん出現し、アルツハイマー病特有の繊維が増えてきます。

アルツハイマー病の原因はまだはっきり解明されてはいませんが、前述したような理由から活性酸素の関与も疑われています。

痴呆症アルツハイマーは、神経細胞のミトコンドリアの機能が落ちている状態ともいえます。

近年、そのミトコンドリアの機能を高めるのに有効なのが水素である、ということが知られるようになってきました。

脳の材料となっている脂質に、ドコサヘキサエン酸という不飽和脂肪酸が使われていますが、このドコサヘキサエン酸は酸化されやすい脂質で、リポフスチンの増加とも関係があるといわれています。

ドコサヘキサエン酸は男性よりも女性の脳に多く含まれていて、アルツハイマー病が女性に多いことと関係があると指摘する研究者もいます。

日本人に多いといわれている老人性痴呆のもう一つの原因である脳血管痴呆
(脳血管が老化して障害を起こし、大脳の機能が低下する病気)も、動脈硬化のところで述べたように、活性酸素の知識を利用することが必要なのかもしれません。

 

白内障

白内障も高齢になると避けられない病気の一つですが、これも活性酸素が関係している可能性の高い病気です。

目の中には水晶体といって、ちょうどカメラのレンズのような役割を果たしている部位がありますが、この水晶体が加齢とともに硬くなり、濁ってきて光を通しにくくなるのが老人性の白内障です。

人によって現れる年齢は異なりますが、老化現象の一つです。

 

目は物を見るためにあるわけですから、紫外線の影響は避けられません。

紫外線は体外から活性酸素(特に反応性の高い一重項酸素)を発生させる元凶の一つですから、目はいつも活性酸素の危険にさらされているといえます。

「雪目」と言って強い日差しに長期間さらされていると、目に障害が起きますが、これも紫外線が原因です。

雪目までならなくとも、高齢になると活性酸素に対する防御機能も低下してきて白内障が起きるのです。

ビタミンEが白内障の予防に役立つことが分かっていますが、これも紫外線によって発生する活性酸素の防御になっているためです。

 

リウマチ性関節炎

リウマチ性疾患にはいろいろな種類がありますが、リウマチ性関節炎は活性酸素が関係している病気です。

この病気の原因はまだよくわかっていませんが、関節に炎症が起こって痛む病気です。

ウイルスや細菌の感染を抑える免疫機能が異常に働くためにおこると考えられていて、自己免疫疾患の一つともいわれています。

リウマチ性関節炎にかかった人の関節には、免疫に関係する白血球の一種の好中球が多く見られます。

この好中球は、ウイルスや細菌を殺すのに活性酸素を使いますので、この好中球が作り出す活性酸素がこうした障害を引き起こすのではないかと考えられています。

また、関節には関節を円滑に動かすために滑液という潤滑剤があるのですが、一般にこの滑液には活性酸素を消去するSODやがラクターゼのような抗酸化物質が全然ないか、あってもごくわずかで、いったん好中球の活動などで活性酸素が発生すると、これを消去する方法がありません。

リウマチ性関節炎にかかった人の滑液や血液の中には、過酸化脂質が増えていたり、ビタミンCの量が減っていたりする現象がみられます。

 

虚血性疾患

虚血といって、いったん何らかの原因で血行が止まり、再び血行が戻ったときに、活性酸素が発生します。

一時的に大量の血液が流れるために酸素の量が増え、活性酸素もそれにつれて増加すると考えられています。

狭心症はいったん心臓の動脈で血行が止まる病気で、虚血性疾患の代表的な病気です。

また、臓器移植を行う時も、一旦血液の流れを止めてしまいますので手術が完了して血行が再度戻った時に、やはり活性酸素の発生によるダメージがあって、この害を最小限に食い止めるためのの手立てを講じなければなりません。

狭心症や臓器移植ではあまりポピュラーな話ではありませんが、実は日常的にも血行が止まり再び血行が戻るといった現象はしばしば起きているのです。

強いストレスを感じた時がそうです。

 

ストレスというのは、もともと人間の防衛反応のひとつで、例えば、敵から攻撃を受けて逃げ出そうとした時にもおきます。

逃げ出すために血液はそれを使う筋肉に集中させられます。

ですから、逃げるのに必要のない消化器系には血行をぐっと絞ってしまいます。

ストレスから解放されて、やれやれした時に消化器系にも血行が一気に戻ってきます。

その時に結構の再流入という現象が起きるわけです。

ですからストレスが多い人は胃を痛めるケースが多いのですが、これも活性酸素の悪さなのです。

度重なるストレスは、出来るだけ避けて通る工夫をしましょう。

ここに紹介したもの以外にも、様々な病気が活性酸素と関係があるらしいと考えられていますが、今後の研究が明らかにしてくれることでしょう。