老化の原因と活性酸素(1)

人の身体も酸化します

「日々、あなたの身体は酸化しています」といっても、あまり実感もなく「そんなこともあるだろう」と思われるだけかもしれません。

 

しかし、近年になって、老弱男女を問わず、老化という誰でもが何とか避けて通りたい人間の宿命も、体が酸化するのが原因で起こる現象であると考える研究者が増えてきたとしたらびっくりされるでしょう。

さらには、熟年期に起きる様々な病気、癌や動脈硬化、老人性痴呆、糖尿病など老化の象徴ともいえる様々な病気の引きがねも、すべて体の酸化と関わっている、ということが次第にわかってきたのです。

「酸化」という言葉は、日常よく使う言葉ですし、鉄や油が酸化することはだれでもよく知っていることですが、「体が酸化する」ということになると、「いったい体のどこが酸化するのだろか」と考えてしまうのではないでしょうか。

例えば、酸性食品の摂り過ぎで体が酸性になってしまったとか、関節が錆びついてギシギシしはじめた、などは酸化とは関係ありません。

 

体の酸化の原因物質

体が酸化するという事は、実は細胞レベルの話なのです。

人間の身体は、約60兆個の細胞が集まって構成されていますから、細胞が酸化するという事は、身体全体、皮膚も血管も、各種の臓器を構成している組織さえも、どこでも酸化されてしまうということなのです。

この細胞レベルでの酸化の主犯格は、血液中の赤血球に乗って体中を駆け巡っています。

ですので、体中のどこでも酸化の危機に脅されているともいえるのです。

血液のある所に酸素があり、その酸素が酸化の主犯格なのです。

人間が酸素を吸って生きている限り、酸化させることと、それをさせまいとするせめぎあいが細胞レベルで行われています。

そして、そのせめぎあいにほころびが生じてくるのが、老化という現象なのです。

ところで、酸素が人間をむしばんでいる主犯格と言っても、信じがたいかもしれません。

しかし、私たちが空気中から取り入れている酸素は、ちょっとしたきっかけで性質の違った反応性に富んだ「活性酸素」という酸素に変身します。

実は、今まで単に酸素と言ってきましたが、この「活性酸素」こそが、人間の体の酸化(老化をはじめ、癌、動脈硬化といった成人病の原因)の真犯人なのです。

 

シミは体の酸化の跡

では、人体の酸化の結果は、どのように現れるのでしょうか?

全身の細胞が酸化するといっても、なかなか理解できないでしょう。

また、体内の臓器が酸化しているといっても、実際に見ることも出来ません。

しかし、人体の酸化の結果を実際に見ることは出来るのです。

実は、体の表面が錆びた(酸化した)という実感はないかもしれませんが、誰もが年齢とともに気になる増えるシミ、これを老人斑といいますが、このシミは人間も酸化されるということの証ともいえる現象なのです。

このシミは肌に現れるだけでなく、同じような現象が、心臓の筋肉にも脳の中の細胞にも、ところかまわず年齢を重ねるにしたがって増加しているのです。

肌は確かに空気と接していますから酸化されるといわれると実感がわきますが、まさか心臓の筋肉まで酸化されるとは思ってもみなかったことでしょう。

人の身体は油でできている?

鉄が錆びる(酸化する)のは理解できるけれど、人の身体が酸化するといわれてもどうしても実感ができない方は、天ぷら油を思い出してみてください。

使い古して時間の経った天ぷら油は黒ずんできて嫌な臭いがしたり、食べてしまうとお腹を壊してしまいます。

これは天ぷら油が酸素によって酸化してしまったために起こります。

これと同じよう変化が人の体の中でも起こっているのです。

人の身体は細胞がたくさん集まってできていますが、その細胞を囲んでいる膜(細胞膜)の主要な材料の一つが油と同じものなのです。

正確にいいますと、「不飽和脂肪酸」なのです。

不飽和脂肪酸は、構造上酸化しやすい性質があるということになります。

つまり、不飽和脂肪酸は、細胞を形成するのにとても重要な成分ですが、同時に酸化しやすいという欠点もあるのです。

シミは、肌の下にある皮下組織が酸化したものです。

皮下組織物の不飽和脂肪酸を成分にした細胞からできていますので、紫外線に当たると活性酸素が発生して不飽和脂肪酸は酸化されてしまいます。

その上、この酸化はとめどなく広がってしまうという性質を持っていますので、色素のたんぱく質が出てきて、この現象を留めるように働きます。

これがシミとなって残るわけです。

鉄や天ぷら油を錆びないようにするには、酸素と接触しないようにしておけばいいのですが、人の身体は酸素を使ってエネルギーを作っていますので、酸素に接触しないようにすることが出来ないのです。

私たちの身体では、エネルギーを作るのに複雑な化学変化を体の中で行ってエンエルギーを作っています。

その際に、酸素を使って化学変化を起こしていますので、天ぷら油が熱で参加してしまうのと同じように、細胞の重要な成分が酸化して破壊されてしまう危険性は十分にあるわけです。